EU、AI透明性義務の適用開始 生成コンテンツにラベル義務、違反に最大1,500万ユーロ
欧州委員会がEU AI Act第50条の透明性ルールを適用開始。生成AIやディープフェイクへのラベル義務、EUアイコン、最大売上高3%の制裁金など、EU展開する日本企業の経営者が押さえるべき要点を解説する。
30秒でわかる記事要約
- 欧州委員会がEU AI Act第50条の透明性義務の適用を開始した
- AIとの対話明示や生成コンテンツへのラベル付与が義務化される
- 違反時は最大1500万ユーロか全世界売上高3%の制裁金が科される
- EU向けにAIサービスを提供する日本企業も対象になり得る
- ラベル付与はシステム見直しが必要で、専門家への相談が望ましい
EUの欧州委員会は、AI規制法「EU AI ActEU AI Act(EU AI規制法)EU AI Actは、AIをリスクの高さに応じて分類し、規制内容を定めた欧州連合の包括的な法規制です。EU市場でAIを提供・利用する企業には域外の日本企業も対象となり得るため、海外展開する経営者にとって遵守体制の整備が重要な経営課題となります。詳しく見る →」の第50条に基づく透明性ルールの適用を開始したと報じられた。生成AI生成AI(Generative AI)生成AIとは、テキスト・画像・音声・コードなどのコンテンツを人間の指示(プロンプト)に応じて新しく生み出すAIの総称です。大量のデータから学習したパターンをもとに、質問への回答や文章作成、要約、翻訳などを自動で行います。ClaudeやChatGPT、Geminiが代表例です。詳しく見る →やディープフェイクなどを扱う事業者に対し、利用者への明示やコンテンツへの表示を義務付ける内容だ。EU域内で事業を展開する日本企業にも関わる可能性があり、経営者が把握しておくべき動きである。
何が起きたのか
欧州委員会はEU AI Act第50条に定める透明性義務の適用を開始した。第50条は、AIシステムの提供者や利用者に対する情報開示のルールを定めた条文とされる。
主な義務は次の点である。まず、利用者がAIと対話していることを明示する必要がある。次に、生成AIが作り出したコンテンツやディープフェイク(実在の人物に見せかけた偽の画像・音声・映像)に、ラベルや機械が読み取れるマーク「EU Icons」を付与することが求められる。
違反した企業には、最大1500万ユーロ、または全世界売上高の3%のいずれか高い方を上限とする制裁金が科される可能性があるという。
EU AI Actは、AIをリスクの度合いに応じて規制する枠組みとして段階的に適用が進められている。今回の透明性義務は、その一部に位置づけられる。適用開始日など詳細の一部は、現時点では本記事で確認できる範囲にとどまる。
EUアイコン
Basic Icon(基本アイコン)
使用する場合AIがディープフェイクコンテンツ(画像、音声、動画)や公開された文章の作成に関与している場合、または独自のテキストラベルやインタラクティブな第2階層の表示を実装する場合に使用する。
使用例
「音声はAIで生成」というテキストラベルの後に、Basic Iconを表示したディープフェイク動画
Fully AI-Generated(完全AI生成)
使用する場合ディープフェイクコンテンツ(画像、音声、動画)または文章のすべてがAIによって生成されており、プロンプトプロンプト(Prompt)プロンプトとは、ChatGPT、Claudeなどの生成AIに対して人間が与える指示や質問の文章のこと。AIはこの指示内容に沿って回答を生成するため、プロンプトの書き方次第で出力の質が大きく変わる。AIを業務で使いこなす上での基本操作にあたる。詳しく見る →の入力を除き、人間が作成した要素や人間による編集・監修が一切含まれていない場合
使用例
政治家や架空の出来事を題材とした、完全にAI生成されたディープフェイク動画
AIによって完全に作曲・制作された音楽や芸術作品※
AIが生成したニュース要約
※芸術、創作、フィクション、風刺に該当する作品については、情報開示義務が限定される場合があります。
Partially AI-Modified(AIによる一部改変)
使用する場合既存の人間が制作したコンテンツの一部をAIで変更し、ディープフェイクにした場合、または公共の関心に関わる文章をAIで一部変更した場合
使用例
本物の写真に写っている人物の顔を、AIを使って政治家の顔に置き換える
何も置かれていないアパートの実写写真に、AIを使って家具を配置する
経営者が押さえるべきポイント
第一に、規制の対象範囲を確認する必要がある。EU AI Actは、EU域内で事業を行う企業やEU向けにサービスを提供する企業に適用される場合があるとされる。日本企業でも、EU市場でAIを使ったサービスを提供していれば対象になり得る。
第二に、生成AIで作成したコンテンツの表示対応がコスト要因になる。ラベルや機械可読マークの付与には、業務フローやシステムの見直しが必要になる可能性がある。
第三に、制裁金の規模は無視できない。最大1500万ユーロまたは売上高3%という水準は、対象企業にとって経営上のリスクとなる。自社が対象かどうか、どの業務が該当するかを早期に整理することが望ましい。
なお、具体的な適用条件や自社への該当性の判断は、法務・規制の専門家に相談することを勧める。EUの規制動向は、日本を含む各国のAI規制の議論にも影響を与える可能性があり、動向を注視する意味は大きい。
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